「子どもの権利条約」を日本が批准して、30年が経った。昨年、ようやく条約の精神にのっとった「こども基本法」が施行され、子どもにとってより身近な自治体レベルでの動きも本格化している。東京経済大学の野村武司教授(子ども法)は、国がさらなる取り組みを進めるとともに、市区町村の動きがカギになると語る。

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東京経済大学の野村武司教授=東京都中野区

 ――これまでの日本の動きをどう評価しますか。

 子どもの権利条約を批准したとき、日本は憲法があり先進国でもあるので、法改正や財政的措置は必要ない、というスタンスでした。そのため、条約にもとづいて積極的に何かをやろうという動きは緩慢だったと思います。

 一方で、子どもに関しての包括的な法律がない、子ども施策を進める戦略がない、組織が整備されていない、また権利に関する独立した救済機関がないということは再三、国連子どもの権利委員会から指摘されてきました。

 近年、こども基本法、こども家庭庁、そしてこども大綱がつくられ、形を整えたという意味で非常に進歩だったと思います。ただし、子どもの権利保障に向かってのスタートラインに立ったに過ぎません。

 ――何がポイントになるでしょう。

 国がやるべきことは多くあり…

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